• 概要             
  • 地理総合の最終単元C「持続可能な地域づくりと私たち」での「防災学習」での活用事例のうち、「1時間目 河川の合流点にある『藤岡市市街地』の概観」について紹介します。
  • 使用データ
  • 効果      
  • 評価       
  • 「地元の生のデータ」を使った地図教材とWeb地図を軸に、地域を概観させる中で、同じ市街地の中であっても様々な条件の異なる地区があり、洪水リスクのありようが様々であることをイメージさせることができました。


群馬県立藤岡中央高等学校で地理教員をしている田中隆志先生は、2009年から、地理に関する国内外のサイトや様々なスキル、自分で作成した地図・地理コンテンツを、世の中に広げ、少しでも地理や地図を楽しいと感じられる人たちを増やしたいと思い、GEOLINK(https://geolink.jp)を立ち上げました。 今回は、田中先生が国土数値情報を使用した教材を使った、高等学校地理総合の「生活圏の防災」の授業について紹介します。


概要

地理総合の最終単元C「持続可能な地域づくりと私たち」での「防災学習」での活用事例
「1時間目 河川の合流点にある『藤岡市市街地』の概観」

生徒には、読図する4枚の地図を貼り付けた紙ベースのワークシートを配布しました。さらにクラウド型学習支援アプリ「ロイロノートスクール」で、中央にWeb地図を組み込んだコンテンツ「生活圏を4地区に分けて、特色を概観」をパソコン上で配布して、 紙ベースの地図とWeb地図(https://geolink.jp/web/20240330gunma8/0000214.html)の両方を使いながら、グループ単位で相談しながら地図中の4地区について読図させました。最後、グループを代表して何人かに各地区の読図結果を発表させ、 クラス全体の共有をはかり、最後に個々の生徒に「まとめ」として、ロイロ上のコンテンツに読図結果をまとめさせ、提出させました。


ある生徒のまとめ


【初期画面(標準地図)】
「標準地図」で、藤岡中心部にあるA~Dの4地区を概観させました。余裕のある生徒には、下の「陰影起伏図」、「空中写真」で、地形や土地のイメージも概観するように指示しました。


使用したデータと加工方法

教材の核となるWeb地図の作成
(1)使用したデータ
  • 行政区域「群馬県」(2024年)
  • 土地利用3次メッシュ(2016年度)
  • 500mメッシュ別将来推計人口(2018年/H30国政局推計)
  • (2)加工方法
    QGISによって、地理院地図タイルを背景地図として、国土数値情報を読み込んで原図を作成しました。そしてqgis2webプラグインでWeb地図化したものを、個人サイトGEOLINKにアップしました。

    国土数値情報ウェブマッピングシステムによるWeb地図で代用する場合
    自分でデータを直接QGISで加工することで、凡例の着色パターンを調整してデータ細部を見やすくしたり、表現できるようにしたりすることができます。ただここのWeb地図上でも、「国土数値情報」の土地利用>「土地利用細分メッシュ」、各種統計>「500mメッシュ別将来推計人口」の所を使うことで、土地利用、人口分布を大まかに概観することができます。 (https://nlftp.mlit.go.jp/webmapc/


    効果または評価

    「地元の生のデータ」を使って地域を概観させたことで、同じ市街地の中であっても様々な土地条件の地区があり、洪水リスクのありようが異なることをイメージさせることができました。また自然災害リスクを考えていくときに、地域性を考慮する必要があることを理解させられたと思います。


    【土地利用(2016 年度)】
    「土地利用(2016 年)」で、藤岡中心部にあるA~Dの4地区について、地区ごとの土地利用の傾向を客観的に把握させました。地図から、Aは「建物用地」としての利用が多い住宅地、Bは中央を横切る高速道路の北が「建物用地」が多い住宅地で、南が「田」の多い農地、Cはほぼ全面が「建物用地」となっている住宅密集地、Dは「建物用地」となっている住宅地と「田」の多い農地が混在する地区だと概観できます。陰影起伏図ではA~Bの北に自然堤防、C~Dの西に台地があることが分かります。「建物用地」が多い住宅地は人・建物が多く、洪水発生時に災害規模・混乱も大きくなり、「田」の多い農地周辺は水路が多いため、避難行動の際の障害になることを想起させつつ読み取らせました。


    【人口総数 500mメッシュ(2020 年推計)】
    「人口総数 500mメッシュ(2020 年推計)」で、A~Dの4地区について、地区ごとの人口分布の傾向を確認させました。地図から、AはJR北藤岡駅のある南東部に人口が多いこと、Bは高速道路北の住宅地に人口が多いこと、Cは全体的に人口が多いもののJR群馬藤岡駅のある中心商店街がある付近に人口集中地区があること、Dは全体的に人口は少ないものの、高崎市新町やCの人口集中地区に近い北辺に人口が多い地区があることが確認できます。人口が多い所が、洪水発生時にパニック、交通渋滞が起こりやすいことを想起させながら読み取らせました。


    【老年人口 500mメッシュ(2020 年推計)】
    「老年人口 500mメッシュ(2020年推計)」で、A~Dの4地区について、地区ごとの老年人口分布の傾向を確認させました。地区では、AにはJR北藤岡駅のある南部に老年人口の多い地区があること、Bは高速道路北の住宅地のうち北東に老年人口の多い地区があること、Cは全体的に老年人口が多く、とくに人口の多い南側に老年人口が多いこと、Dは全体的に老年人口は少ないものの、北東や西の人口集中地区に近い所が老年人口が多いことが確認できます。老年人口が多い場所が、洪水発生時に高齢者への避難行動の支援や早期避難が必要になることを想起させつつ、読み取らせました。



    参照サイト




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